<新春対談>HRエグゼクティブコンソーシアム代表の楠田祐氏と語る、2023年人事の課題「 会話の必要性 」

更新日: 2023-01-12

HRエグゼクティブコンソーシアム代表の楠田祐氏と、アジャイルHR代表取締役 松丘啓司の対談をお届けします。

アナログのコミュニケーションが必要

楠田:2022年の夏にカリフォルニア州のサンフランシスコベイエリアからシリコンバレーあたりであることが流行ったそうです。私達が小学校のときに行った林間学校とか臨海学校で経験したキャンプファイヤーです。

スマホをしまい、炎を囲んで生身の人間同士が僕のパーパスはこうだ、君はどうなんだ?といったことを語り合います。もちろんみんなマスクを外しています。西海岸のIT企業が多く、そこから他の企業にも波及しました。コロナ禍でリモートワークが続き、IT企業だとMan to Displayで仕事するんでしょうけども、そうするとやはり人間って何なんだろうということになります。炎の前で対面で語ることによって自分はこういう人間なんだ、と気づかされたということです。

他方、日本は同時期に何をやっていたかと言いますと、会社に何割まで来た方がいいのか、何パーセントは家で仕事していいのかといった比率の問題を一生懸命考えたり、会社の中のオフィスのレイアウトを変えたりしていました。人間的というより総合的な動きに注力していたかと思います。アナログのダイアログコミュニケーションがやはり人間として必要なんだな、ということがわかりますよね。

ところで、1on1を実施している企業にかなり聞きました。どうやら、予想通りでしたが、ワンウェイになってしまっている会社があります。コロナ禍でマネジャーは部下の進捗に不安があるので、重箱の隅をつつくように、いつまでにできるかなどと期限を聞くような話がすごく増えています。部下が1on1を嫌になってしまい、またやらなきゃいけないのかと思ってしまう。私も、どうしたらいいのかという質問をよくもらいます。コロナ禍で1on1はブームになりましたが、一時の台湾のタピオカドリンクのようです。もうタピオカの店は今PCR検査場に変わってしまったくらいの印象ですよね。ですから1on1をブーム的にやると廃れていくという方向に少し向かっているかなと思います。

昨年の夏ぐらいから秋にかけて、高野山に幹部を連れて行き合宿をするという日本企業もありました。もちろんスマホは切る、能登半島にてみんなで議論、対話をするというのを実施したとも聞いています。キャンプファイヤーはそこではやらなかったようですが、やはり人間として、アメリカも日本もこれだけコロナ禍が千数百日と長引くと、少し人間らしいところに戻ってくるので、それをやりながら、デジタルにうまく持っていく、というのがどうやら一つのヒントになるのではないかと思っています。

やはり1on1はきちんと誰かが指導して定点観測していかないとワンウェイになってしまったり、もう1on1自体が嫌になったりしてしまいますから、改めて襟を正してやっていく必要があると思いますが、いかがですか?

マネジャーの力量を会社の仕組みでカバー

松丘:そうですね。最初のキャンプファイヤーの話もそうですし、やはり、人と会話することによって、刺激を受けたり、励まされたりしますので、ワークエンゲージメントを高めていくっていう上ではすごく大事なことかなと思います。

エンゲージメントに影響を及ぼす要因として、仕事自体が好きだからだということもありますが、やはり職場の同僚や上司からのコミュニケーションやサポート、フィードバックといったものがすごく重要だということはわかっています。ですから、エンゲージメント、特にワークエンゲージメントを重視していくというのが一つの方向性だと思います。

また、1on1はそういうメンバーのエンゲージメントやパフォーマンスを高めたりするための支援型のマネージメントですが、今までやっていなかった人に、すぐやってくださいというのはなかなか容易ではないので、研修等を十分に行って意義や具体的な方法を理解してもらうことは必要なことだと思います。ただ、マネジャーによる力量の差というのが出やすい分野かなと思うので、1on1だけ単独で入れることも意味がないわけではありませんが、会社の仕組みとして、OKRのように目標設定のやり方自体を一人ひとりの主体性を重視したような形に変えていく。あるいは360度フィードバックを入れて、1on1以外でフィードバックが得られるような仕組みにしていく。個人の実力に頼るのではなくて、会社の仕組みとして、目的を実現していくといったことが必要なのかなと思います。

自由と責任より不自由と無責任?

楠田:近年、自由と責任という言葉が西海岸からきていますが、自由と責任と言っている企業会社自体が不自由で無責任になっているなと感じることもあります。他方、日本企業も意外と不自由で無責任だと感じることもあります。やはり自由と責任はユートピアの世界なのでしょうか?

松丘:なかなか難しい問題ですね。当然、自由に自分のやりたいことができるということは責任を伴うと思いますが、そんなに重い責任は負いたくないから、多少不自由な方が心地よいという人も多いと思います。

楠田:確かに、意外と日本人は不自由でもいいなとなっている人が多いかもしれないですね。不自由で賃金が安くても、クビになるよりいいと考えている人も多いかもしれません。とはいえ相変わらず世界でGDP3位をけん引しているので、それなりの日本企業の立ち位置というものがあるかなと思っています。やはり21世紀になって中国があれだけ台頭してくる中で、日本はB to Cの製造業が多いですが、この20年でマークアップ率の低いものはほとんど売却しました。

空気が読める強みを活かす

どちらかというと、B to Bの技術力と品質の高いものでいく企業がすごく増えてきていると思っています。例えばiPhone内蔵カメラは日本製ですし、テスラの素材や部品もほとんど日本製になってきています。いわゆるJapan as No.1の頃はコンシューマ向けでアメリカなどに上陸していましたが、今はメーカーの名前は出ない、中だけのB to Bの会社として残っているところが、マークアップ率も需要も高く、世界中から発注が来ています。そこを、中国や台湾にある工場で作ってもらったりするというようなサプライチェーンがうまくできていると思っています。その辺はいかがですか?

松丘:そうですね。そういう黒子的なところで、目立たないが技術力でうまく抑えていくというビジネスモデルはあるかもしれません。

楠田:日本人は手先が器用で品質にこだわりますし、技術力も高いですよね。これは日本人同士の空気が読める世界じゃないとできないと思いますし、空気が読める国民ってあんまり世界中見てもいないと思うので、逆にそれがいま強みになっていると思います。

余談ですが先月アメリカ合衆国とオーストラリアから7人来日された際に、彼らは当然マスクをしていないだろうと思っていたのが全員していました。そして、私がマスクを取った瞬間に全員がマスクを外したので、彼ら自身も日本人は空気を読む人たちだということを勉強していて、そういうことも大切なんだということを気づき始めているのだと思いました。

優秀な人たちは他国に合わせるんだということも感じましたし、GDP3位の国に、それ以外の国民が合わせてきているということが、新しい時代の日本の強みであり、基本的な働き方や空気を読む人材を世界的に作る、輩出することもそろそろあるかもしれません。

HRのテーマから少し高い次元になってしまいましたが、今はそういう時代であり、いずれにしろ、会話は必要だということをメッセージとして伝えたいと思います。