【導入事例】
WAKUAS活用でエンゲージメントサーベイのスコアが上昇

更新日: 2022-11-10

 

トレンドマイクロ株式会社 小木曾光倫氏(右):日本電子計算株式会社 名古屋支店入社。自治体向け総合行政システムの導入/運用/保守に従事。1997年、トレンドマイクロ株式会社 入社。一貫してエンジニア系の職種に従事してきたが、キャリアを振り返るなかで新しい領域にチャレンジを開始、現在人事(4年目)。
HRBPとテクノロジー推進の大きく2つの役割を担当。テクノロジーに関してはデータドリブンのカルチャーを社内に醸成するために様々な仕組みを取り入れている。

 

1on1navi(現在はWAKUASに改称)を導入している企業とのインタビュー対談をお届けします。

※各社における1on1navi(現在はWAKUASに改称)導入の背景、導入・運営にあたってのポイント導入後の効果など、OKRや1on1に関するトピックスを中心に実際の事例についてのお話を伺っています。

今回は、トレンドマイクロ株式会社 人事部 ビジネスパートナー 小木曾光倫氏にお話を伺いました。

 

松丘:最初に御社がどういう会社か、特徴を教えていただけますか?

 

小木曾氏(以下、敬称略):トレンドマイクロは、日本発の多国籍企業で、世界30カ所以上にオフィスを構え、グローバルにセキュリティソリューションを提供しています。

 

「単に報酬のためではなく、いい仕事をしたい」「自らの力によって、キャリアを築く」というキャリア自律(“Be Yourself”)の考えに共感する人材の集団です。“Be Yourself”は創業者スティーブ・チャンの座右の銘でもあり、この考えから、当社にはキャリアパスは存在していないので、何がしたくてここへきて、将来、何をやるかは基本的には自分で決断してください、とメッセージしていて、自身で決めることにより納得度の醸成をしています。

 

また、世界中の拠点からベストプラクティスを共有して、日々のビジネスに取り入れてお客様に価値を提供するということが自然に行われ、オフィス間での異動はもちろん再入社も多かったり、副業も盛んだったりと、“Be Yourself”に共感できる人には非常に働きやすい会社だと思います。

 

松丘:“Be Yourself”という価値観が共有されていて社員が自律的ならば、1on1に取り組みやすそうですね。御社においては、元々、自律的な人が入社してきているのでしょうか?

 

小木曾:当社では、採用時にカルチャーフィットに重きを置いていて、特に主体性や自律性にこだわっています。なので、やりたいことやパッションがない人は基本的に採用していません。また、創業者発案の「トレンドラーニングサークル」というトレーニングプログラムがあり、社員は定期的に受けないといけないので、そういったこともカルチャーの浸透に役立っています。

 

松丘:御社の評価システムについても教えていただけますか?

 

小木曾:パフォーマンスではなくコントリビューション、つまり結果を出すよりもチームに貢献することが評価につながっているというのが大きな特徴です。そのためには、未来志向で物事を考えて、何をすれば評価されるのかという目標設定を、いろんな人と対話しながら決めていく必要があります。ですから、上司と部下や横のつながりに信頼関係があり、何でも話せる関係が重要と考えています。それには1on1が効果的なので、創業者のスティーブ・チャンが2000年以前から1on1を導入し、すでに習慣化されています。

 

松丘:1on1はどのように実施されていますか?

 

小木曾:各フロアに1on1専用のガラス張りのブースを設け、とにかくオープンに行われています。頻度としては、少なくとも月に1度、多い人で2週間に1度くらいです。

 

1on1の効果が本当に出ているかという点については、以前は「結局、業務の進捗確認になってしまう」「キャリア自律なんだから自分で考えて行動してよと言われて終わってしまう」などのネガティブな声もあったりして、なかなか理想の姿に近づくのは難しいこともありました。そこで、マネージャー向けに公開1on1をするなどのトレーニングをしたり、人事部による社内ブログで啓蒙したりしてきました。

 

松丘:長く1on1をやられてきて変化はありましたか?

 

小木曾:はい。2010年からトレンドマイクロのリーダーシップスタイル自体が、トップダウンのスタイルからサーバント型に転換したため、1on1もそれに同期して変化してきています。具体的には、上司に進捗を詰められてしまうような1on1から、部下の成長をきちんと意識してサポートしていくような1on1へと確実に変わってきています。

 

現在は、さらに1on1を磨いていくために、ポジティブインフルエンサーを見つけて、そのインフルエンサーに「1on1をするとどんないいことがあるのか」を共有したり、1on1navi(現在はWAKUASに改称)〔注:株式会社アジャイルHRが提供するITツール〕の記録機能を利用して経験学習を促進するようなことにも力を入れています。

 

松丘:日本の多くの大企業はトップダウン型あるいはウオーターフォール型のようなやり方で長くやり過ぎてしまっているので、なかなか変われない人が多いと思いますが、御社ではいかがでしたか?

 

小木曾:全社員が集まる場で、リーダーシップのスタイルの転換について社長からメッセージが伝えられました。トップの人たちがそういうこと(サーバント型リーダーシップ)を楽しんでやることで、周りも「それがよいことなんだ」と、どんどん広まって浸透していくというアプローチがとられました。一気に変えるのではなく、徐々に広げていくというやり方です。

 

松丘:先ほど目標設定の話が出ましたが、御社のOKR(Objectives and Key Results:目標設定の手法)の取り組みの例について教えてください。

 

小木曾:コントリビューションマネジメントが大切だと先ほどお伝えしましたが、実際にはなかなか設計した通りには進まず、上司が同じ職種のメンバーに一律で目標を設定するなど、一人ひとりの成長支援につなげるのが難しいということもありました。そこで、目標設定の際にOKRの考え方を取り入れて、きちんと目標を構造化して、その達成率や進捗状況を1on1navi(現在はWAKUASに改称)に入力して周囲と共有することを始めています。

 

私自身も、自分で工夫してしたことを、書き残すようにしています。それによって、自己成長につながっていると思います。記録したものがないと、「なんとなく成長したような気がする」になってしまいますから。1on1navi(現在はWAKUASに改称)を活用することで、自分の目標が誰と関係しているかが分かるため、仕事がより早くなるし、コラボレーションが促進されているとも感じます。

 

松丘:1on1navi(現在はWAKUASに改称)に記録することを手間と感じませんか?

 

小木曾:よい実感があるとしっかり残したいと思うので、手間とは感じません。1カ月に1回書く程度なので。私の部署の場合は、毎月レポートを書かねばならないのでそのタイミングを活用しています。あちこちに書くとなると手間なので、1カ所にため込む感じです。

 

横のOKRの関連づけも各自が自発的にしています。人事総務本部の下に3つの部があり、それぞれ何を目指しているのかというイニシアティブがあるので、この3つのレベルで何がどうつながっているのかというところまでは説明しますが、あとは自分で1on1navi(現在はWAKUASに改称)を見にいきます。

 

松丘:1on1の振り返りも周囲に公開されているのでしょうか?

 

小木曾:基本的には本人に任せていて、公開してもよい情報は公開するようにしています。とはいえ、公開したくない話もあるので、そこはプライベートのところに書くというやり方をしています。

 

松丘:自分が「こういうことに気づいた。こういうことを感じた」ということをオープンにすることに抵抗がある会社も結構あると思いますが、御社の場合はどうですか?

 

小木曾:もちろん公開したくない人もいるので、やりたくない人に無理強いはしません。ただ、よいことが周りで起きれば、じゃあ自分もちょっと変えてみようかな、となってくると思っています。

 

松丘:1on1navi(現在はWAKUASに改称)導入後の効果はいかがですか?

 

小木曾:1on1navi(現在はWAKUASに改称)を活用していくにあたってエンゲージメントと相関関係があるという仮説のもとに始めましたが、エンゲージメントサーベイの「総合的な満足度」「人間関係」「組織風土」「承認(会社の理念などの理解)」のスコアがそれぞれ上昇しています。関係者全員を集めて、同じ時間に同じ場所で登録し合うなどの取り組みを行って、一気に利用者数が増えたことも要因だと思います。また、OKRをうまく運用すると目標達成率も上がりますし。

 

松丘:ところで1on1navi(現在はWAKUASに改称)を使うのはスマホとPCだとどちらが多いですか?

 

小木曾:最初はPCですね、その後のアップデートはスマホが圧倒的に多いです。

松丘:2年半前に1on1navi(現在はWAKUASに改称)の設計を始めた際、本当に企業内アプリでいいのだろうか? という心配がありました。しかし、御社の事例を伺っているとアプリの方が感覚的に合うと確信しました。御社はITの会社ですから、元々スマホ利用に関するリテラシーがあったのでしょうか?

 

小木曾:そういうのもあると思います。ビジネス上、緊急連絡が必要となるケースや仕事の利便性を上げるため、多くの社員にスマートフォンを貸与していますし、ITリテラシーの高い社員が集まっていますので。

 

松丘:読者の方からすると「そこまでしている会社がある」と、刺激になるお話だったと思います。御社の1on1やOKRのベースになっている” Be Yourself “ やリーダーシップスタイルについても非常に感銘を受けました。本日はありがとうございました。

 

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